事前の完全な仕様確定が極めて難しい。
単純な商品の売買であれば、
Aをいくつ、Bをいくつ、Cをいくつ、
それぞれ1個あたりいくらで、いつまでに、
ということでさほど、売買の対象を確定することは困難ではありません。
また、システムでも、パッケージ化されたものであれば、
予めデモなので、内容を説明し、
その上で納得して導入してもらえるのであればさほど困難な問題は生じません。
他方で、新規のシステム開発案件等では、
おおよその内容を確定することはできますが、
細部に渡ってまで、要求仕様を事前に確定することは困難で、
その不確定なままの前提で、納期を定め、請負金額を定めているため、
もともと、トラブルが生じない方が不思議とも言えるのです。
発注者と受注者の意識のギャップと
受注者が無理に発注をとることも問題を生じさせる原因となる。
1 発注者が専門的知識を持たない場合
こういう場合には、受注者側も
「どうせ、専門的な説明をしても分からないだろうから」と考えて、
「とにかく、いいようにやりますから任せて下さい」程度のことしか言いません。
発注者の方も、フロムスクラッチからの構築であればともかく、改変等の場合には、
「ちょっと項目を増やすだけだからたいした手間ではないだろう」
「単に移植するだけだから2,3週間もあれば充分にできるだろう」
と思ってしまいます。
加えて、発注者からの説明が必要なケースでも、
「前任者がもうやめちゃって良くわからない」
「逆に、どういう仕様なのかこの際教えて欲しい」などと言われる始末である。
それで、作業に入ってから、
「実はこの項目を足すとここをいじらなければならなくなるので、
追加の費用と期限の延期が必要となる」
「御社からの事前にこういう説明を受けていなかったので当初の予想と大分ずれてきた」
などと説明を始めると、発注者もそこで
「じゃあ、なんで言ってくれなかったんだ」となります。
2 発注者は素人ではないが、下請に出している意識が強い場合
このようなケースでは、
「仕事を出してやっている」
「無理を言っても聞くだろう」
「嫌ならよそにやらせる」
と口に出してこそ言いませんがそういう意識を持っていて、他方で、
受ける側もあまり細かいことを事前にいうと切られちゃうかもしれないと思って、
仕様変更のデッドラインを明確に伝えなかったり、
見積もりの工数をどこまで超えたら追加費用をもらう等の話をしないことが多い。
そうすると、案の定、最初のうちは、多少、仕様の変更等を言ってきていても
「まあ利益になるなら」と思ってまじめに受けていたが、最後の方になって、
かなり難しい変更を伝えられ、
「それではむしろ赤字になるし、期限も到底間に合わない」
と言い出すと、発注者も
「期限に間に合わないなら逆にその損害も弁償しろ」などということになる。
いつからが契約で、どこまでがプレゼンなのか分からない。
とっかかりは、(潜在)受注者側からの売り込みなのか、
(潜在)発注者側からの打診なのかはともかく、
「お宅の技術を使ってこういう感じのものができないか」と問い合わせをすると
「できます(できると思います)。是非、うちでやらして下さい。」
などと、大抵の場合にはなる。
それでああでもない、こうでもないと打合せを繰り返し、
試作品・ベータ版にまでいった段階で、
では、そろそろ契約書を巻きましょうかという段階になり、
価格が全然折り合わず、やっぱり、今回は見送りますと発注側が言うと
「冗談はやめて下さい。
一体、どれだけうちは時間と人を使っているんだと思っているんですか」となり、
発注側も「契約するかしないかは自由だろう」となる。