福島原発問題で、原子力か自然エネルギーかという、
二者択一的な議論が近時目立って参りましたが、そのような極端な議論は、
現実に即していません。
誰も原子力を好んで迎え入れる人はいないでしょうが、実際に電力需要があり、
それに応えていかなければ国の産業発展に支障を来すということ、
いざというときの資源封鎖・資源の枯渇・高騰が危惧されること、
化石燃料による温室効果問題に対処しなければならないことから、
石油・石炭・ガス以外のエネルギーを模索しなければならないことは自明です。
ただし、今回の原発問題で明らかになりましたが、
原子力は安全でも(いざ災害が起こった場合を考えると)安価でもありません。
原子力が有用であるのは『それが事故に見舞われない限り』という
不確定要素を前提とする場合に限られます。
方向性としては、化石燃料と原子力エネルギーを減少方向に向かわせて、
代替エネルギーへの転換を図っていくことが求められます。
原子力が化石燃料に比べて安上がりであるというのは幻想です。
今回の原発事故を見れば分かります。原子力は最も高くつくエネルギーです。
一旦、事故が起きた場合には…、
・周辺住民や企業が全てを投げ打って待避せざるを得なくなる
・農作物は廃棄せざるを得なくなる
(実際に放射性物質を帯びているかどうかはともかく
実際には市場では値がつかない)
・土壌汚染で耕作は数年間行えなくなる
・海水汚染で水産業も数年間行えなくなる
・外国人観光客は訪れなくなる
・日本からの輸出物が受け入れられなくなる
・外国企業が日本での企業活動を行わなくなる
・原発の事故処理そのもの(廃炉を含む)
…et c
以上のような被害を真剣に分析・評価すれば、
原子力がいかに経済合理性を持たないエネルギーであるかが分かると思います
原子力をなくし、化石燃料の依存を減らしということになれば、
当然電力需要をまかなうだけの電力の供給ができなくなってきます。
しかし、まずは、電力需要といっても、各家庭生活における電力需要と
産業における電力需要とを分けて考える必要があります。
産業における電力需要を押さえ込んでしまうということは、結局、
我が国の生産活動に歯止めをかけることになるので、
それこそ経済的に計り知れないダメージを与えることになります。
他方で、家庭生活における電力需要というのは、
生活の利便性向上のための電力需要ですから、その利便性を落としても、
産業を優先に電力を配給することを考えるべきです。
なお、産業といっても、様々で、ディスプレイ的な要素のための電力需要や
単純な事務作業の場合の電力需要は可能な限りにおいて節電化が求められるところです。
徐々に各家庭における節電の意識が高まってきていますが、
さらに、徹底した電気をあまり消費しない生活が求められ、しかも、
それが通常になるというところまでの意識の変更、
スモールライフへのライフスタイルへ変更が必要となってきます。
なお、家庭生活といっても、単純に家庭内だけの話ではなく、街頭一つとっても、
こんなに間断なく並べる必要があるのか、デパートでもこんなにたくさんの
エスカレーターが必要なるのかと思われる箇所はたくさんあります。
そのようなものについても、ほとんどの需用者が不要であると思っていることを
企業側は理解すべきです。
電力の供給量を増やすことと電力の需要を総体として減らすことは
当然並行して行われるべきものであり、電力の供給を増やすにしても、
クリーンエネルギーへのシフトを図っていく必要があります。
クリーンエネルギーとして有望なのは?
→ 様々なクリーンエネルギーが取りざたされていますが、
やはり有望なのは太陽光発電でしょう。
もちろん、太陽が出ていないときは発電できない、
パネル面積に比しての得られる電力が少ない、
設置コストがかかる等の問題点は指摘されているところですが、一番の魅力は、
各家庭ないしは地域が取り組むことがその気になれば容易であるという点です。
風力発電も魅力的ではありますが、その設置した場合の弊害の少なさからいえば、
やはり太陽光パネルには勝てませんし、
水力や地熱はそう簡単にどの家庭でも取り組めるものではありません。
電力需要を押さえ込む決め手は?
→ 冷暖房におけるヒートポンプ技術の普及・活用
夏場には冷房による電力需要により、供給量を上回るおそれがあることから、
またしても計画停電が必要となるかもしれないといわれているとおり、
電力需要削減のポイントは冷暖房による電力需要を押さえ込むことなのです。
→各家庭・各ビル・施設における太陽光パネルを普及させ、
ヒートポンプ技術を活用していけば、
相当程度のエネルギー事情の改善に繋がるはずですが、
その普及に当たって問題となる局面とその解決方法を技術的・社会事象的局面から
探求していくことが必要となります。